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スヴェトラーナ・ザハロワ

6月27日(金)に新国立劇場で白鳥の湖を観ました。
もちろん主役はザハロワです。

水も滴るという感じは少し薄れましたが、感涙ものの美しさは相変わらずですし、オデットの踊り方が型のレベルまで洗練され、オディールの表現も大人っぽくなり、世界最高のオデットから世界最高の白鳥(オデット&オディール)に進化した感じです。頼りになる味方が、道化と、王子の友人と、チェリストだけしかいなくても、チャイコフスキーとプティパの至高の美を体現してくれました。さすが、クラシックバレエの化身、世界のプリマ、ロシアの国会議員です。

ウヴァーロフは体を壊しているのか、見る影もなく精彩を欠いていました。できることなら休養に専念してください。日本人ダンサーは、コールドの女性数人を除いて、もう少し頑張りましょう。踊り難い指揮だったとは思いますが、集中力ですらザハロワに大差をつけられていますよ。

改定振り付けの良い点は、ルースカヤがある点です。昨年の島添さんのルースカヤは素晴らしい集中力でした。悪い点は、ロットバルトの衣装に黒と緑の二種類がある点です。ふくろうだかなんだか知りたくもありませんが、同一人物に見えないのが最悪です。全体的に幕の内弁当的ですので、もう少し整理しましょう。今のままでは、個々の踊りが薄すぎて、特にルースカヤ以外の民族舞踊が貧相です。踊り手の問題もあるのかもしれませんが...。

CMのせいか、客層が変わっていました。何を目当てにしてもいいけど、少しはオペラグラスを手放して拍手してほしいものです。そして、良い踊りを観たならば、そのダンサーが舞台袖に完全に隠れるまで、労を惜しまず拍手し続けましょう。良い踊りを披露したのに途中で拍手が終わってしまって小走りで舞台袖に隠れなければならないのでは踊り手が可哀相です。良い踊りを見たければ評価を踊り手に伝えるべきだし、クラシックバレエは舞台の空気の一部を観客に任せるように作られているのですから、消費するだけでなく、芸術活動に参加しましょう。

日本のオーケストラの人は、まずは筋トレをしましょう。日本人だろうが外国人だろうが、オケピに入れる人数は同じ筈なのに、この音量の差はいったい何なのでしょう。安心して聴けたのはチェロだけでした。楽器を壊せる腕力がなければ楽器をぎりぎりで制御することなどできない筈です。腕力の問題ではなく美意識の問題だというなら、そんな美意識は踊りの邪魔ですから、捨ててください。盛り上げるべき民族舞踊の場面で神経質な演奏をするのはおかしいでしょう。客の鼓膜を破る気概で演奏してください。それでなくても、チャイコフスキーの音楽は、どこかのパートの音量が小さいだけで別の曲に聞こえてしまうのですから、総じて腕力のない日本人なら全力で演奏して丁度でしょう。

チャイコフスキーを演奏する人は、レニングラード(マールイ(ミハイロフスキー))バレエの日本公演を観てください。もちろん、オーケストラもいっしょにやってくる毎年冬の引越し公演です。最初のオーボエの一音からして、ロシアのバレリーナの腕のようです。アニハーノフの指揮で聴きたいものです。ムラビンスキーやカラヤンは偉大ですが、彼らが表現したのはチャイコフスキーの一部に過ぎません。白鳥の湖に関してはタッグル指揮のスカラ座が最高です。

また、ロパートキナやゲルギエフのように洗練されたものだけがロシアではありません。「洗練」というからには、磨かれていないむき出しのものが根底にある筈です。「洗練」の対象を知らなければ洗練しようもないでしょう。「洗練」の対象を知らない人は、リヒテルのピアノ協奏曲第2番(ラフマニノフ)を聴き、ボリショイバレエの引越し公演を観ましょう。もちろん、リヒテルのようには演奏できないでしょう。しかし、根底には、リヒテル程の人が表現しようとした何かがあるのです。それを知っているのと知らないのとでは、ビブラート一つでも違ってくる筈です。ボリショイバレエを生で観る機会がないなら、ボリショイのセメニャカ主演のライモンダの映像がお薦めです。セメニャカはニーナの前の世代の看板プリマです。画質は酷いのですが、舞台自体は良い出来ですし、タランダの野趣溢れる踊りに対する拍手が大きすぎて録音レベルが一時的に下げられているのが如何にもボリショイらしくて楽しい映像です。

蛇足ですが、バヤデール(バヤデルカ)を演奏するなら、パリ・オペラ座のゲラン主演の映像で予習するのがお薦めです。あのコールドバレエを見ずしてクラシックバレエの演奏してはいけません。なお、舞台を生で観るのが面倒だったら、映像で、ザハロワの脚、ロパートキナの腕、ギエムの全身を見てください。どんな指揮者よりも優秀な教師です。ザハロワを見ながら演奏できれば十分なのでしょうが、指揮者に背を向ける訳にはいかないでしょうし、できたとしても、ザハロワが出てない場面で困りますし...。やはり、映像でも生でもいいから本場の舞台を観るしかないと思います。

だめだ。止まらない。もうやめよう。


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